大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸家庭裁判所 昭和53年(少)7号 決定

少年 I・I(昭三八・一・一生)

主文

少年を初等少年院に送致する。

本件強制措置許可申請は却下する。

理由

(非行事実)

少年は、中学校に入つたころから自動販売機荒しなどの窃盗・校内暴力・シンナー遊びなどの非行を繰りかえし、児童相談所による一時保護などの補導が加えられて来たが、再三無断外出をし、所在不明の期間も長期になつたりして、昭和五一年一一月一二日○○市児童相談所の措置により教護院○○学園に収容されたが、同学園からも再三無断外出をし、学園内においても女子寮に侵入を繰りかえすなどの問題行動を重ね、遂に同五二年七月一四日国立教護院○○○学院への措置変更となり、翌七月一五日埼玉県下の同学院に収容されるに至つた。しかるに、同月二二日には同学院の寮の鉄格子を破つて脱走し、同月三一日兵庫県下の○○警察署に保護されて同学院に連れ戻されるまで帰院せず、更に同年一〇月三日未明同学院の寮の入口の戸を破つて脱走し、神戸市内に逃げかえり、同市内の××警察署警察官らに再三発見されながら、振りきつて逃げ、同年一二月二八日当裁判所の発した同行状により身柄を拘束されるまでの間、あちらこちらと逃げまわつて不良者と交り、シンナー遊びをし竜とぼたんの剌青をし、車上狙いをするなどの不良行動をしていたもので、このまま放置すれば、その性格および環境に照して、将来、窃盗・恐喝・暴行などの罪を犯すおそれがあるものである。

(適用法条)

少年法三条一項三号イ・ハ・ニ

(処遇の理由)

一  少年の家庭は、少年一〇歳ころまでは両親が健在で、少年も特別問題を起さなかつたようであるが、そのころ父が病死し、母が交通事故にあつたことなどのため、少年の面倒も十分みられなくなり、中学校に入つたころからは、窃盗・校内暴力・怠学・シンナー遊び・一時保護や教護院からの無断外出・浮浪徘徊などと非行を重ね、遂には保護環境から全く離脱するに至つた。母も昭和五二年二月に死亡し、今や、二〇歳になる姉I・S子が職業を持ち、幾分頼れるのみである。

二  長い浮浪の生活のうちに、勉学や仕事をするなどの意欲は殆どなくなつており、又被害体験が多かつたためか、他人に心を開かず、障害があると逃避するという性格・生活態度になつている。

三  教護院○○学園から再三無断外出をしたこと、国立教護院○○○学院からも短期間のうちに鉄格子を破り或は入口の戸を破つて二度も無断外出をしたこと、警察官が少年を再三発見しながら、取り押えることができず或は身柄を確保しながら振り切つて逃げられたことなどを考えれば、在宅による保護が不可能であるばかりでなく、強制措置をとりうる国立教護院○○○学院に収容したうえ保護を加えることも極めて困難であろうと考える。犯罪性もあると考えられるので、少年院に収容するのが相当である。

四  少年院においては、中断されたままの義務教育を修了させると共に、自活のための生活訓練をも実施して載きたい。

以上のとおりであり、少年法二四条一項三号・少年審判規則三七条一項により、少年を初等少年院に送致することとし、又少年を少年院に送致した以上、教護院収容を前提とする○○市児童相談所長の本件強制措置許可申請は、その必要性がなくなつたので、却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 田中明生)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例